2013年11月29日に近日点を通過したC/2012 S1(ISON)は、
SOHOなど太陽観測衛星の画像から、核が崩壊したと考えられる。
今後は、肉眼で観測可能なほど明るくなる可能性はなくなったと考えてよい。
当初期待された大彗星になる事はかなわなかった。
が、彗星の本性を知りたいと考える者にとっては、
崩壊の過程の解明は、
今後の彗星の予報の役に立つだけでなく、
強烈な太陽の光と重力にさらすという天然の「大実験」を通して
彗星核の性質をさぐる千歳一隅のチャンスを得たと受け止めることができる。
崩壊したからこそ顕在化した何かがあるはずだ。
当面気になるのは、再度地上観測が可能となる12月上旬からの観測テーマである。
まだしばらくは太陽に近く、宇宙望遠鏡はもとより、地上の大型望遠鏡による観測は困難。
まさに、アマチュアの小さな望遠鏡の出番である!
1 雲状の崩壊物のその後
広視野・高感度の機材を使える場合は、
太陽観測衛星の視野から去った雲状の崩壊物が、
どのような形・明るさになっているのかをとらえたい。
その結果から崩壊物の総質量を求めることができれば、
ISON彗星の核の質量の下限値を得ることができ、
近日点通過以前に推定されていた核直径の検証にもつながる。
また、形状変化にダストテイル解析の手法を応用することで、
崩壊物の物性(光学特定や太陽熱に対する融けやすさ)を知る事ができるかもしれない。
2 彗星核は生き残っているか?
長焦点距離・高空間分解能の機材が使える場合は、
雲状の崩壊物の中・あるいは周辺に彗星核の破片に相当する光点がないかを
調べたい。
もし検出できれば、その(それらの)位置、明るさを調べることにより、
核の分裂時刻、分裂時の相対速度、サイズ分布が得られる。
これまでに蓄積されてきたsungrazersのデータに新たなケースを追加することになる。
もちろん、「彗星核の破片は観測できなかった」という観測事実も有益。